労作教育の実践

 見付中学で昭和2年から11年まで化学の教員を務めた武末知一氏の教育論です。昭和11年に玉川学園出版部から刊行されました。尾崎楠馬校長が序文を書いています。武末氏は労作教育を指導した小田原勇・初代教頭から宮崎中学時代に薫陶を受けています。

武末氏は労作教育を筋肉労作(勤労作業)と精神労作の両面から紹介しています。

筋肉労作は校庭整備、防風堤構築、プール建設が有名ですが、それ以外に多様な作業が行われたことが記録されています。地域の祭りの前日の境内掃除、天竜川からの土砂運搬、ペンキ塗り、道路修理、果樹園開設、養鶏作業などです。学年や係に分かれて作業していました。生徒の作文を掲載し、学年ごとに意識が向上する成果を分析しています。

精神労作とは、本書の表現によれば、思索追求によって人生の道徳的価値、哲学的価値、宗教的価値を発見・創造することです。担任のクラス50人に週一回、日誌を提出させ、批評・助言を書いて返します。その実例を載せています。例えば「どうしても予定通りはかどらぬ」という悩みに対し、「自らを放棄するな。牛の如く忍耐強く勉強せよ。今年の一年は二度と来ないぞ。自ら信ずる如くなるものだ」と励ましています。自宅に呼び、3時間にわたってじっくり話した、という記載もあります。

武末氏の教育論は「学科教授の労作教育化」にも広がります。知識偏重で詰め込み型の授業ではなく、生徒の自発的な学習を促すような教育方法を具体的に論じています。さらに、記憶を試すような定期試験でなく学習ノートや授業での質問、実験などで評価する重要性を説き、「無試験教育論」を展開しています。

当時の見付中学の教育内容を知る貴重な資料となっています。

労作教育の実践